SDVについて

SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)に関しては、ECUの書き換えに関する課題だけでなく、ビークルAPIや自動運転、ECUアーキテクチャ、セキュリティ、データセンター、AI、AI向けCPU(GPU、NPU、SoC)、高速メモリなどの課題も挙げられています。本投稿では、過去のSDVに関する投稿も含めて整理しました。なお、私はSDVに関して専門家ではないため、実際のSDVと異なる点があるかもしれません。ご了承ください。

SDVの開発フェーズ

SDVは、次のように開発フェーズを分かれると思います。尚、ビークルAPIについては、私では分からないため、未記載とさせていただきました。

開発フェーズ主要機能概略開発
Phase 1
OTA機能搭載
Over The Air(OTA)– ECUリプロ機能
– リプロセキュリティ
1-1 OTA
1-2 セキュリティ(標準規格、独自規格)
1-3 次世代車載機器およびECUアーキテクチャ定義
1-4 MBDアジャイル開発環境
Phase 2
テレマティクス機能充実
User’s Application– スマホやPCのアプリケーション
SNS、GAME、VOD、Payment、生成AI、 コンシェルジュAI、プライベート情報セキュリティ
2-1 ユーザの個人情報セキュリティ(利用履歴および情報の隠蔽)
Phase 3
自動運転およびライドシェア
自動運転– ライドシェアサービス
– Payment
– 自動運転
– 自動駐車
3-1 自動運転AI
3-2 画像認識AI
3-3 車載AI用CPU(GPU, NPU, SoC)
3-4 車載AI用メモリ

SDVネットワーク

Phase3のSDVネットワーク構成は、下記のような構成になると思います。

SDV対象ソフトウェア

Phase3のSDV対象となる車載のソフトウェアは、下記のようになると思います。

ここで大切なことは、機能安全を確保しなければなりません。これらのソフトウェアに不具合が生じた場合、重大な事故を引き起こす可能性があります。たとえば、スマートフォンのアプリケーションでも、個別の不具合が電話機能に影響を与えないよう設計されています。

  • TelematicsのUser’s Applicationは、車両制御系やECU系のアプリケーションソフトウェアに影響を与えないように分離することが重要です。
  • OTAによるアップデートが可能だからといって、車両制御系やECU系ソフトウェアの品質検証を軽視したままリリースしてはなりません。
SDVソフトウェア車載機器: ソフトウェアソフトウェア開発・提供元OS
OTA(セキュリティ含む)Telematics: OTAOEM, Tire1Linux, AAOS, iOS
統合ECUOEM, Tire1Linux, RTOS
ECUOEM, Tire1各ECU RTOS
ADAS ECUOEM, Tire1RTOS, SoC
User’s ApplicationTelematics: User’s ApplicationApplication提供事業者AAOS, iOS
Telematics: User’s Application(プライベート情報セキュリティ)OEM, Tire1AAOS, iOS
AI Learning Information(セキュリティ含む)Telematics: Vehicle Control AI*OEM, Tire1, AI ServiceLinux, SoC
統合ECUOEM, Tire1Linux, RTOS
Image AI*OEM, Tire1, AI ServiceLinux, SoC
Traffic Information and
Automated service(セキュリティ含む)
Telematics: NavigationNavi Service, Automated ServiceAAOS, iOS
VICSセンタAAOS, iOS
Telematics: Vehicle Control AI*OEM, Tire1, AI ServiceLinux, SoC

* 車載AIには高性能なCPU(GPU、NPU、SoC)と高速なメモリが必要であり、OEMやTier1、Tier2が開発

AAOS: Android Automotive OS

“Telematics and Vehicle control”アーキテクチャ

“Telematics and Vehicle control”アーキテクチャをAndroidのアーキテクチャを参考にして作ったみました。赤枠の部分は、専門外で勉強不足なため私のイメージです。

Phase 1-3 次世代車載機器およびECUアーキテクチャ定義

OSS-ECALと関係が深いPhase 1-3 次世代車載機器およびECUアーキテクチャ定義について考えてみたいと思います。

ECUシステム

ECU(Electronic Control Unit)ドメイン・アーキテクチャについて、ECUを下表のようにまとめてみました。今後は、SDVによって複数のECU機能を統合したゾーン・アーキテクチャに変わっていくと思います。

系統ユニット名略称役割
パワートレイン系エンジンコントロールユニットECU (Engine Control Unit)エンジンの燃料噴射、点火、アイドルなどの制御
インバーターコントローラユニットICU (Inverter Control Uint)EV/HEVのモーター駆動(インバータ/コンバータ)の制御
トランスミッションコントロールユニットTCU (Transmission Control Unit)AT/CVT/DCTの変速などの制御
バッテリー管理システムユニットBMS (Battery Management System)EV/HEVのバッテリー残量や温度の管理
エネルギーマネジメントシステムユニットEMS (Energy Management System)車両全体のエネルギー最適化の制御
シャシー系車両運動制御ユニットVCU (Vehicle Control Unit)走行モードや車両挙動を統合制御
電動パワーステアリングユニットEPS (Electric Power Steering System)ハンドル舵角の制御
車両安定制御ユニットESC (Electronic Stability Control)滑りや横転防止のブレーキ制御
アンチロックブレーキユニットABS (Anti-lock Braking System)タイヤロック防止のブレーキ制御
電子制御サスペンションユニットECS (Electronic Controlled Suspension)サスペンション硬さの制御
四輪駆動制御ユニットAWD (All-Wheel Drive)4WD車の駆動力配分の制御
ボディ系ボディコントロールユニットBCM (Body Control Module)ライト、パワーウィンドウ、ドアロックなどの制御
スマートキーユニットKOS (Keyless Operation System)キーレスエントリー制御、エンジンスタート制御
空調制御ユニットHVAC (Heating, Ventilation, and Air Conditioning)エアコン・ヒーターの温度・風量調整の制御
ランプ制御ユニットLCU (Lamp Control Unit)ヘッドライト・テールランプ・ウインカーの制御
シート制御ユニットSCU (Seat Control Unit)電動シートの位置調整・ヒーター制御
ルーフコントロールユニットRCU (Roof Control Unit)サンルーフ・コンバーチブルルーフの開閉制御
ADAS系高度運転支援ユニットADAS (Advanced Driver Assistance System)衝突回避、車線維持、ACCなどの統合制御
車線維持支援ユニットLKA (Lane Keep Assist)車線の逸脱防止・ステアリング補正制御
自動緊急ブレーキユニットAEB (Autonomous Emergency Braking)衝突回避のための自動ブレーキ制御
アダプティブクルーズコントロールユニットACC (Adaptive Cruise Control)先行車との車間距離維持の制御
駐車支援ユニットAPA (Automatic Parking Assist)自動駐車アシスト制御
360度カメラ制御ユニットAVM (Around View Monitor)複数のカメラ映像を合成し、車両周囲の表示

ECUアーキテクチャの主な構成

ECUアーキテクチャは、ドメイン・アーキテクチャであってもゾーン・アーキテクチャであっても、基本的にセンサやアクチュエータには大きな変化はありません。
本項では、センサ系ECU Layerおよびアクチュエータ系ECU Layer、外部メモリ系ECU Layerの基本的な構成を紹介します。

センサ系ECU Layer

センサは、下図のようなECU Layerにて構成されています。

アクチュエータ系ECU Layer

アクチュエータは、下図のようなECU Layerにて構成されています。

外部メモリ系ECU Layer

外部メモリは、下図のようなECU Layerにて構成されています。

ECUアーキテクチャとOSS-ECAL

OSS-ECALは、基本的に多種多様な製品(HALやMCU)に搭載することを想定して設計しているソフトウェアです。よって、OSS-ECALはECU Layerと高い親和性を持っています。OSS-ECALが対応しているセンサやアクチュエータであれば、他のECUに配置変更されても簡単に移動できます。また、Linux搭載の車載機器でもOSS-ECALは対応しています。

電子部品の標準API化

OSS-ECALのAPIは、部品型番を意識しています。しかし、#defineにてAPIを標準化できます。

例)温度センサABC1のアプリケーション登録

/* Temperature ABC1 read function*/
etSTS oABC1_READ( float32* );
#define TEMPERATURE_READ oABC1_READ

etSTS TEMPERATURE_READ( float32* rlt )

温度センサABC1を温度センサABC2に変更する場合のアプリケーションの変更箇所。尚、OSS-ECALファイルは、ABC2のファイルに入れ替えてください。

/* Temperature ABC2 read function*/
etSTS oABC2_READ( float32* );
#define TEMPERATURE_READ oABC2_READ

etSTS TEMPERATURE_READ( float32* rlt )

今後の車載対応OSS-ECAL

これから車載対応OSS-ECALは、次の対応を行っていき、自動車業界の発展に寄与したいと思っています。

  • 車載用電子部品の拡充
  • 各MCU SDKツールのOSS-ECALアドオン開発
  • Eclipse SDVなどのSDVツールのOSS-ECALアドオン開発
  • OSS-ECALのSlimulinkモデル開発

OEMやTire1の皆様は、必要なOSS-ECALがございましたら電子部品メーカ様や電子部品商社様にご相談頂きますよう、お願いいたします。

最後に

SDVについては、今後さらに情報を収集し、本投稿を随時更新していきます。内容が変わっている可能性もありますので、時々ご確認ください。

OSS-ECAL Japanese
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