この投稿では、組込み製品のフェーズごとのVプロセスの特徴と違いについて紹介します。尚、製品によって大きく異なるかもしれませんので、ご注意ください。
組込み製品の開発フェーズは、次のように大きく分けて試作開発フェーズと量産開発フェーズに分かれます。
試作開発フェーズ
目的
試作開発は、新たな製品または従来製品の改善の設計やコンセプトの確認・検証を目的とします。
特徴
・初期の設計段階では、MBDにて設計やコンセプトの確認・検証が行える
・少数の試作品を作成し、モノで確認・検証が行える
・アジャイル開発のように迅速にプロセスを回せる
量産開発フェーズ
目的
量産開発は、製品を大量に生産することを目的とし、コスト効率や品質の安定性を確保することが重視されます。また、試作開発で確立された製品を基に、製品のグレードなどに応じて展開されることもあります。例えば、自動車の場合、車種やグレード、仕向け地に応じた展開が行われます。
特徴
・日程重視
・品質を重視
・コストの最適化
・製造の最適化
・デリバリの最適化
・製品の展開
フェーズ別の各プロセスの重要要件と重要プロセス
下表に示すように、フェーズごとに重要な要件や重点を置くプロセスは異なります。しかし、多くの品質規格はこうした実態を反映せずに定義されており、その結果、多くの企業ではフェーズに応じて品質マニュアルや設計ルールを柔軟に変更せず、実態と乖離しているケースが見られます。その結果、後から行う作業が生じたり、製品計画に影響を与える場合がありますので、ご注意ください。
また、赤太字の重要要件や重要プロセスは、重要視していただきたいと思う要件やプロセスです。
表. フェーズ別の各プロセスの重要要件と重要プロセス
フェーズ | System | HW | SW |
---|---|---|---|
試作開発 | 重点要件 ・機能*、性能 ・筐体、重量 ・量産コスト 重点プロセス ・要件抽出 ・システム要求分析 ・アーキテクチャ設計 ・MBD、MILS | 重要要件 ・機能*、性能 ・筐体、重量 ・量産コスト ・生産性 重要プロセス ・ハードウェア要求分析 ・HWアーキテクチャ設計 ・回路設計 ・回路シミュレーション ・パターン設計 ・材料、部材、部品の選定 ・試作品テスト環境構築 | 重要要件 ・機能*、性能 ・カプセル化 ・開発効率性 重要プロセス ・SW開発環境構築 ・基本設計 RTOS設定 マイコン機能設定 周辺IC設定 ファイル構造 メモリ配置 共有資源アクセス方法 ・状態遷移設計 ・SWアーキテクチャ設計 |
量産開発 | 重要要件 ・機能*、性能 ・品質規格適合 重要プロセス ・MBD、MILS ・System統合、結合テスト ・System適格性確認テスト ・System影響範囲テスト | 重要要件 ・機能*、性能 ・品質規格適合 ・信頼性 ・生産性、歩留まり ・環境性 ・デリバリ ・量産コスト 重要プロセス ・部品の選定、調達 ・信頼性テスト設計 ・製造ライン構築 ・量産品テスト環境構築 | 重要要件 ・機能*、性能 ・品質規格適合 ・Project管理 ・信頼性 重要プロセス ・SW詳細設計 ・SWユニットテスト ・SW統合、結合テスト ・SW影響範囲テスト |
* 機能には機能安全を含む